サプライチェーンにおけるレジリエンスとは? 各社の取り組み内容や定義のまとめ

ここ最近物流関係者と会話している中で、新型コロナウイルスによる影響もあってか、resilience/レジリエンスという言葉を耳にする機会が増えてきたと感じます。
このresilienceですが、直訳すれば「回復力」や「弾力性」です。
危機的な状況や不利な状況ら脱する=回復する力ということですよね。
多くの会社は新型コロナウイルスによって突如危機的な状況に陥り、会社を立て直す必要が出てきている中で、「resilience」が注目されるのも分かる気はしますね。
実際北米のソフトウェア会社Blujay Solutionsが実施した調査によると、先般より続く新型コロナウイルスによって発生した混乱の教訓を活かして、約75%もの企業がサプライチェーンを見直す必要があると考えているそうです。
サプライチェーンにおけるレジリエンスの意味
このresilience(レジリエンス)ですが、サプライチェーンとの関わりにおいてどのような意味合いで使われるのかは分かりずらくないでしょうか。
サプライチェーンを回復する力・立て直す力と言われても、なんかピンと来ないです。
幾つかその意味合いについて、参考書籍から引用させて頂きます。
著書『The Resilient Enterprise: Overcoming Vulnerability for Competitive Advantage (English Edition)』によると、
For companies, resilience measures their ability to, and the speed at which they can, return to their normal performance level following a high-impact/low-probability disruption.
レジリエンスとは、予測できなかった事象が発生し企業が大きな脅威にさられて企業が危機的な状況に陥った状況から元通りに回復するための、力とスピードのこと。
そういう意味だと、日本はこれまでも幾度もの地震や津波、戦争といった危機的な状況に陥っては立て直してきた経験がありますので、レジリエントな力は持っているのかもしれません。
一方、セイノー情報サービス(株)社長でもある鳥居さん監修の書籍『協調時代のサプライチェーン』の中では下記のように書かれています。
・あらゆる変動に適応してサプライチェーンを持続し続ける能力がレジリエンスです。
・レジリエンスを有するサプライチェーンを構築するためには、次の3つのステップが必要になります。1.サプライチェーンを可視化する、2.リスクに対してサプライチェーンを多重化する、3.有事の際に機動的にサプライチェーンを復旧させる
なるほど、調達網を多重化することで、サプライチェーンにおける欠品リスクや価格リスク等を分散させるということですね。
その上で同書ではOODAループを回すことにも触れています。
具体的な解説は書籍の方にも書いてありますので参考にしてみて下さい。
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レジリエンス構築に向けた取り組み事例
今サプライチェーンにおけるレジリエンスが必要だということが分かった上で、具体的な取り組み事例を見ていきたいと思います。
例えば下図はドイツの物流企業DHLにおけるレジリエントなサプライチェーン構築を目指した取り組みです。
DHLの場合はレジリエンス360というクラウド型のリスク管理プラットフォームを提供しています。
レジリエンス360の具体的な仕様については分からなかったですが、基本的にはITシステムでサプライチェーンを管理していく方針ですね。
下記はサプライチェーンのITソリューションを提供するBlue Yonder社の取り組み事例です。
WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル)とタッグを組み、何かパンデミックが起こった際に情報提供する仕組みを作っているそうです。
なるほど、WSJとタッグを組むという発想は面白いですね。
レジリエンス構築に向けて何から始めればいいのか
個人的には鳥居さんの書籍にもあった方法論がしっくりきます。
つまり、まずは自社のサプライチェーンを可視化する、すなわち現状を把握するということ。
ただそれだけでは道半ばであり、その後サプライヤーを多重化し、更には迅速にサプライヤーを変更できるよう「意思決定の合意」を図っておくことが必要だと説いています。
この「意思決定の合意」というのがポイントなのだろう。これは頭ではわかっているけど、実際にやるとなると、色んな部署が絡んでくるから難しい。
もしかしたら組織構造から見直さなければいけないのかもしれない。
いずれにせよ、
人間は、自然には抗えない。
抗えないけど、対策はできる。
物流コンサルタントとして、どのようにお客様のレジリエントなサプライチェーンの構築が進められるか考えていきたいです。